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3.なぜ、工事成績が上がらないのか?
3.1 力を入れるところが違う
(1) 誤まった情報
工事成績アップを困難にしている、あるいは低下させている第1の理由は誤った情報です。たとえば、
「出来ばえと創意工夫に努力すれば工事成績はあがる!」
「提案件数を増やせば工事成績は上がる!」
というものです。本当に、そうでしょうか? 確かめてみましょう。
(2) 出来ばえ
次のプロット図はある会社のものです。横軸に出来ばえの得点、縦軸に工事成績評定点をとり、それぞれの現場の位置を描いたものです。
図3.1 出来ばえと工事成績
【分析】
①このグラフをみると、各点はバラついていて、出来ばえの評価点と工事成績評定点の間には、相関関係が見られません。
②正の相関関係があるならば、出来ばえの評価点が増加するにつれて、工事成績評定点が増加するので、各点は右上がりに並ぶはずです。
③正の相関関係ないということは、出来ばえの点数が上がっても、工事成績評定点は上らないということです。つまり、出来ばえで頑張っても、工事成績は上らないということを意味しています。
④このグラフで工事成績の最高点は89点です(A現場)。その89点の現場の出来ばえの評価(加点)は1点です(このとき自動的に6.5点が加算されて、出来ばえの評定点は、7.5点となります)。
⑤次に、この中で出来ばえの最高点(満点)は2点(B現場)です。しかし、その現場の工事成績評定点は81点にすぎません。
⑥しかも、出来ばえが1点で、出来ばえが最高点2点のB現場より、工事成績評定点が高い現場が8現場もあります。これから、出来ばえの評価が高い方が工事成績が高いとはいえないということがわかります。
⑦さらに、出来ばえが0点で87点を獲得している現場があります。つまり、出来ばえの点数が低くても、工事成績評定点が低いとは限らないのです。
⑧もとより、出来ばえが0点(c評価)で良いといっているわけではありません。出来ばえが0点(c評価)であると、優良工事表彰はいただけませんので、1点(b評価)は必要です。
⑨もう1つの問題は、出来ばえで満点(2点)をとろうとすると、相当な努力(時間・費用)が必要です。ところが、多くの現場が普通の努力で1点(b評価)獲得しています。だから、どんなに努力しても、出来ばえでは、1点しか点数はupしないのです。
⑩その努力を、たとえば、品質に向けると、工事成績評定点はもっと点数はもっと上がるはずです。
◆
(3) 提案項目
次に、提案項目(工事特性、創意工夫、地域貢献)を見てみます。次のグラフは、横軸に、工事特性+創意工夫+地域貢献の得点をとり、縦軸に工事成績評定点をとって、各現場をプロットしたものです。
図3.2 工事特性+創意工夫+地域貢献と工事成績
【分析】
①驚くべきことに、提案項目と工事成績評定点の間に、提案項目の得点が上ると、工事成績評定点が下がっていくという負の相関関係が現れました。
②ということは、工事特性、創意工夫、地域貢献に努力しても、工事成績は上がらない。むしろ、下がってしまうということを意味しています。
③図に示したA現場は工事成績は89点と最も高いのですが、工事特性+創意工夫+地域貢献の得点は5.5点です。そして、工事特性+創意工夫+地域貢献の得点が8.5点と最も高い現場(B現場)の工事成績は81点と最も低くなっています。
④このような結果になるのには理由があります。その理由は置いておくとして、重要なことは、工事特性+創意工夫+地域貢献に努力しても、工事成績は上がらないということです。工事特性+創意工夫+地域貢献に努力すればするほど、工事成績が下がっていく現場も少なくないのです。
【結論】
「出来ばえと提案に努力すれば工事成績はあがる!」などという無責任なことを、誰が言い出したのかはわかりません。しかし、その言葉に根拠がないということが、これで明らかになったかと思います。
私達は、この分析を、何十という会社で行ってきました。そして、この結論を得たのです。
稀に、提案項目と工事成績評定点の間に正の相関関係らしきものが現れることがありましたが、回帰分析を行い決定係数を調べると、決定係数が小さく、提案項目が工事成績を決定する要因にはなっているという結論はえられませんでした。
◆
3.2 何をやればよいのかわからない
(1) 安全対策①
たとえば、総括監督員の「安全対策」に次のような評価項目があります。
◆
□建設労働災害及び公衆災害の防止に向けた取り組みが顕著であった。
◆
「建設労働災害防止」と「公衆災害防止」について、どんな取り組みをやればよいかは、誰でも、ご存知だろうと思います。この取り組みが顕著であることが求められています。
では、「顕著」とは、何をすればよいのでしょうか? 顕著の意味がわからなければ顕著であるようにはできません。ですから、まず、顕著であると評価されるには、何をすればよいのかを調べ、それを実行しなければなりません。
しかし、やっただけでは、評価されません。評価されるためには「あること」をしなければなりません。それは何でしょうか? これらが明確にならなければ、この項目で得点することは不可能です。
◆
(2) 安全対策②
総括監督員の「安全対策」から、もうひとつ、ご紹介します。
◆
□安全衛生を確保するため、他の模範となるような活動に積極的に取り組んだ。
◆
「他の模範となるような活動」とは何でしょうか? これがわからなければ、「他の模範となるような活動」は実施できません。また「積極的に」とは、どうすれば良いのでしょうか?
こういうことを、いちいち調べて施工しなければ、この項目で得点することはできません。
◆
(3) 舗装工事
これは、検査員の評価項目です。舗装工事に、
◆
□路床及び路盤工のプルーフローリングを行っていることが確認できる。
◆
という項目があります。この項目について、次のようなことを行っておられるはずです。
・プルーフローリングを実施する
・プルーフローリングの状況写真をとる
・プルーローリングの立会を行う
・異状があった場合はその対応をする
これだけやっていれば、大丈夫そうですが、これだけではNGです。ひょっとすると、これだけでOKという自治体もあるかもしれませんが、ほとんどの自治体でNGのはずです。では、何をやればよいのでしょうか?
このように、工事成績評定の項目について、何をやれば加点されるのかを、1項目ずつ丁寧に検討してみるのです。そうすると、意外に求められていることをやっていないことがわかります。それを1項目ずつ潰していけば、工事成績は必ずupします。プルーフローリングで何をしなければならないかということは、プルーフローリングの意味がわかれば、自ずと答えは出てきます。
◆
3.3 やっているだけでは加点にならない
(1) 設計照査
設計照査の評価項目は、
□契約約款第18条第1項第1号~5号に基づく設計図書の照査を行っていることが確認できる。
多くの方が、
・着工前測量の結果を監督職員に提出する。
・着工前に照査を実施し、相違がある場合は協議する。
ということをやっておられると思います。しかし、これでは、間違いなく0点です。
まず、「相違がある場合は協議する」となっていますが、「相違がなかった場合」は、どうしていますか?
このとき、何もしていなければ0点です。
次に、設計照査は何回行っていますか? もちろん、何回やるかは、現場ごとに違いますが、いまあなたが担当している現場では何回やればよいかは決まっています。その回数を満たしていますか? 満たしていなければ、設計図書の照査を行なっているとはみなされません。
◆
(2) 現場密度試験
次に、土工事の現場密度試験を見て見ましょう。
□CBR試験や現場密度試験などの品質管理に必要な試験を行っていることが
確認できる。
という評価項目があります。ここに現場密度試験とありますが、これについては、
・1000㎡に1回
やっておられると思います。これでOKの現場もありますが、NGの現場も多いのです。では、どうすればよいでしょうか? どの程度やればよいでしょうか?
この「どの程度の」という規準を満たさなければ、現場密度試験を行ったとはみなされないのです。
実は、このことは全ての試験で同様の扱いなのです。規準を満たさなければ試験を行ったとはみなされません。
これも、自治体によって規準が異なります。どんなに努力しても「品質」の点数が上がらないという場合は、検査基準を満たしていないのかもしれません。
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3.4 まとめ
この 「3.なぜ、工事成績が上がらないのか?」では、工事成績があがらない理由として、
①力を入れるところが違う
②何をやればよいのかわからない
③やっているだけでは加点にならない
の3点を取り上げました。説明不足の点はお詫びしなければなりません。
より詳しい内容を知りたい方は、弊社まで、お問合せ下さい。
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