2.減点ポイントは意外なところにあった
(1) 工事成績が向上しない驚くべき理由
なぜ工事が低いのか? その理由として、
◆① | 「いまの評定点は担当者による差が大きすぎる。気分で評価しているとしか思えない」。 |
◆② | 「出来ばえで減点されている。創意工夫や地域貢献の提案が出来ていない。提案が不足している」。 |
などの制度の不備、努力不足に関する反省など様々なご意見があります。これらの意見に対して、次のような疑問をお持ちの方も少なくないと思います。
しかし、評価のすべてが「気分」で決まるのでしょうか? 理性的に評価している部分はゼロなのでしょうか?
出来ばえが満点になれば、今より何点上がるでしょうか? 創意工夫や地域貢献に努力すると本当に工事成績はアップするのでしょうか?
◆
この点について、監督職員の意見は、驚くべきものでした。
◆① | 「評価しようと思っても、評価すべ項目が1つも施工計画書に書かれていない」 (検査員Y氏) |
◆② | 「県は、(評定表には書いてない)部外秘の評価基準で評価しています」 (主任監督員M氏) |
◆③ | 「気分ということはない。評価には、必ず、根拠がある」 (元土木事務所長K氏) |
「評価すべ項目が1つも施工計画書に書かれていない」。私達も「そんなことがあるはずがない」と最初は思いました。しかし、事実だったのです。
このことは、受注者が「評価されるだろう」と考えていることと、発注者が「評価しよう」と考えていることに「ギャップがある」ということを示しています。
「部外秘の評価基準」とは何でしょうか? 要するに「工事成績評定表」は、「評定項目」を示したものであり、どの程度やればよいという「評価基準」を示したものではないということです。そして、これを知らなければ、工事成績をアップすることはできないのです。
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(2) 減点の原因は「書類手直し」
発注者は、「現場手直し」と「書類手直し」を比較すると「書類手直し」が圧倒的多数を占めていると発表しています。次のグラフは、ある発注者が発表しているものです。
図2.1 検査結果の集計
日本はモノづくりでは世界一の国です。一部の例外を除くと、日本の建設業が建設した構造物の出来形や品質や出来ばえが劣悪なはずがありません。では、なぜ工事成績が上がらないのでしょうか?
竣工検査を思い出してください。検査員さんは、どのくらい時間、現場を見ていますか?
検査員さんは、構造物を作ったことはないのです。
代理人の皆様が、本当に苦心したことが、短時間の検査で、わかると思いますか?
代理人の皆様の苦心を加味した評価ができると思いますか?
一方、書類評価は基準が明確です。書類の有無、記入項目、提出者、提出先、日付、印鑑…これらをチェックすれば不備はすぐにわかります。
だから、公平な評価をしようとすると、書類重視にならざるをえません。
その工事書類に不備があれば、工事成績評定点は上らないということになります。
つまり、工事成績が上がらない理由は、図2.1を踏まえると、「現場」ではなく、「工事書類」にあるということになります。
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(3) まとめ
①発注者が「評価しよう」と考えていることを把握し、施工計画書に反映させる。
②部外秘の評価基準を満たすように計画し、施工し、その証拠を残す。